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2014-02-01 13:50:00

先日のことでした。

早稲田大学文学部の滝澤先生がオムライスを召し上がっていたとき、店内にはCDで、中島みゆきさんの「時代」が流れていました。

 

静かに耳を傾けておられた先生が高校の教師をされていたときの、ひとりの男子生徒のエピソードを語ってくれました。

 

医師だったお父さんを若くして亡くされたその生徒に、かける言葉もみつからなかった先生は、中島みゆきさんの「時代」をテープに録ると、何も言わずにその生徒に手渡しました。

その後、その生徒とは話す機会もなかったようですが、卒業式の日、先生を訪ねてくると、一言お礼を言ってそのまま泣き崩れたそうです。

その生徒は父親の遺志を受け継いで、今は歯科医として立派に活躍しているとのことでした。

 

ワーグナーやブルックナーの音楽世界に浸っていた私は、75年の世界歌謡祭グランプリだというこの名曲はもちろん、当時の曲は全くと言っていいほど知らず、初めてまともに「時代」を聞いたのは社会人になってずいぶんたってから、NHKテレビの「みんなの歌」で聞いたのではないかと思います。

 

スッキリと描かれたアニメを背景に、「淡々と語られる」よい曲だと思いました。

 

「今日は別れた恋人たちが 生まれ変わってめぐり逢う」部分は、すんなり受け入れられました。

 

しかし、「今日は倒れた旅人が 生まれ変わって歩き出すよ」について・・・。

人が一度倒れてから起き上がる、アニメの映像とともに繰り返されるこの歌詞には、斃れたひとが生き返るものだろうか?」。生まれ変わったらもうだれなのかわからないのではないか?」

自分なりの理解がなかなかできずにいました。

 

しかし、私が成長して歳を重ねるうちに大切な親や家族を亡くし、いつの間にか孫を授かるようになって、「今日倒れた旅人が 生まれ変わって また歩きだすよ」という歌詞が、何の違和感もなく受け入れられるようになりました。

 

それは親から子へ、子から孫へ、大切な人から人へ 命のリレーだと思いました。

40年近く前の、まだ若い時期にこんな凄い曲を作った中島みゆきさんの深み。

 

いつも心あたたまる滝澤先生との会話ですが、その生徒と「時代」のエピソードをお聞きしたときの私は、やっとの思いで涙をこらえることができたのでした。語っておられた先生の目も真っ赤でした。

倒れた父親からこの生徒へ、みごとな命のリレーがなされていたのでした。

 

 

(付記)

   私の高校時代に、部活で親しかった女子が、

   やはりお医者さんだったお父さんを在学中に

   亡くされました。

   そのとき、私はどんな言葉をかけてあげれば

   よいのかわからず、いつもと変わらない態度で

   接していたと思います。

   

   こころ優しく大らかな性格だった彼女を思うと、

   お父さんは大きな愛を注いで、どれほど

   彼女のことを慈しんで育てられたことかと

   思いました。

   

   当時のわたしは、とても先生の

   ような心配りはできませんでしたが、

   彼女は悲しみを内に秘めて、とても立派に

   高校生活を送られました。

   彼女と一緒だった部活は

   今でも私の良い思い出となっています。