インフォメーション

2012-06-04 00:00:00

 

永六輔さんは、話の途中で突然涙があふれて話せなくなることが多くなったそうです。

私も何度か放送で永さんが絶句したのを聞いています。

涙もろいのかと思ったら、病気治療のためのホルモン注射が関係しているようでした。

 

私も昔から、感激したことを話そうとすると、いきなりこみ上げてきて、声がふるえ

話せなくなること度々です。

 

困るのは、映画や演劇、クラシックコンサートの会場です。

茶の間であれば、照れくさいが家族に見られるくらいですが、劇場や音楽ホールは

音響効果がよいので回りの迷惑になってもいけないと、我慢しようとすればするほど

感激の嵐が大きくなります。

 

幼な子二人をつれて見たジブリアニメの「蛍の墓」は大変つらいことになりました。

ハンカチを忘れため、飲み物をこぼしたので脱がせて手に持っていた娘の小さなソックスで、

ぐしゃぐしゃの涙とハナミズを拭くという、悲惨なことになってしまいました。

オイオイと泣き、席を立つのに勇気がいりました。

 

さらに困ったのは、往年の国民的歌手、「渡辺はま子物語」の観劇でのことした。

「支那の夜」や「蘇州夜曲」を歌う、一寸外人ぽいお顔立ち、モダンなおば様、

歌謡界の大御所だという予備知識しかありませんでした。

 

太平洋戦争終結後に、フィリピンの刑務所に戦犯として収容された日本軍兵士たち。

その多くは戦時中、日本軍にひどい仕打ちを受けたフィリッピン人の

不確かな証言に基づくもので、不当な罪を着せられたひとたちでした。

 

そのことを知った渡辺はま子さん。

自分の歌った歌が多くの兵士を極東の戦争に駆り立てたと、責任を感じました。

厚生省復員局のたったひとりの職員と、現地の日本人僧侶の教かい師といしょになって、

法律や規則に縛られて腰の重い厚生省や、ついにはフィリピンのキリノ大統領の心まで

動かし、いわれなき罪に問われ刑の実行を待つばかりだった多くのひとを救ったのです。

 

戦後生まれの私でも、歌手としてのご活躍ぶりを知っていた渡辺はま子さんでしたが、

この感動的な活動については全く知りませんでした。

 

私は、いま還暦を越え、自分たちが育ってきた時代や、幼い頃を思い出すことが多くなり

ましたが、記憶に残る以前ににそんな出来事があったのだなあと、はま子さんを応援して

舞台の中に引きずりこまれてゆきました。

 

この舞台では、渡辺はま子さんを演じた斉藤由貴さん、陣内智則さんの厚生省の局員、

現地で文字通り兵士たちを励まし支え続けた教かい師役の古谷一行さん。

そのフィリピンの刑務所で妻との再会を楽しみにしていた兵士が帰国したが、

妻は夫が戦死したと思い、すでに再婚。当時多くいたであろう苦しむ女性役の古村比呂さん。

はかにも、出演のみなさんがみごとな熱演をされていました。

 

「モンテンルパの夜は更けて」という曲を渡辺はま子さんが歌っているのを、

何度かテレビで見たことがありました。

私の少年期に「ワシントン広場の世は更けて」や「ジャワの夜は更けて」という洋楽。

ダーク・ダックスの「モスコー広場の夜は更けて」という「更けて」ものがはやっていました。

 

私は洋楽の「更けて」に惹かれており、はま子さんなら有名な「支那の夜」や「蘇州夜曲」は

聞きたかったものの、なじみのない「モンテンルパ」だと一寸ガッカリしたものでした。

しかし、「モンテンルパ」とはフィリピンのその刑務所の名前で、曲の歌詞は

そこに収容されていた兵士が、遥か遠い日本を、故郷を、親兄弟を、妻子を思って

作ったものだったのです。

それははま子さんにとっても特別に大切な曲だったことでしょう。

 

登場する人物の掛け値なしの勇気と、人間愛と行動力。

舞台の終盤の展開に、私は激しく心を揺さぶられ、会場中に響く嗚咽を止めることは

もうできませんでした。

 

この公演はすでに終わっていますが、日本人の矜持を描いてとても優れた舞台でした。

立派だったこのひと達を見ると、利権に群がる今の政治家たちは、原発の問題を始めとして、

都合が悪くなると逃げ回り、、税金を徒に食い、一体何をしているのかと思います。

 

この演劇公演はNHKの衛星テレビで放送されました。

できれば小中学生や高校生、若い人たちに見てもらいたいものです。

立派な行動とは何かを知り、きっと勇気をもらえると思います。

 

最近では「小惑星探査機はやぶさ」の話題が大きな感動を与えてくれましたが、

日本憎しの声が渦巻く当時のフィリピンで、大統領の心まで動かして無実のひとたちを救った

歌手、渡辺はま子さんらの行動は、昭和、戦後の時代の日本人の奇跡のひとつとして、

忘れてはいけないと思います。

 

 (付記)

6月と7月の休業予定日については前回HPをご覧ください。

「3つのオレンジへの恋」のことも忘れないでくださいね。

「3つのオレンジへの恋」のオムライスに涙したひとたちのこと、私も忘れません。